2010年8月24日火曜日

空き缶

  

カランコロン
転がる空き缶が
コンクリートを叩く

知らない風が
何度目かの朝を追っている

誰の面影もない街を
カランコロンの音だけが
響いている

なぜか曇り空が不思議と悲しい
あの季節はまだ続いている

このままどこかへ
カランコロンと
落ちていくのか

知らない風の行方が知りたい
向こうの方で
花びらが舞っている

カランコロン
転がる空き缶が
コンクリートを叩く

ただ
カランコロン
カランコロン
カラン
コロン

この缶は誰が飲み干した?




  

2010年8月23日月曜日

 

迷彩のように
運命は紛れる
手の平で遊ばされるように
僕は踊る
時計が止まりだした時から
宇宙は動き出した

隙間だらけのパズルのように
世界は形を見せない
昨日見た夢が
壁の向こうを伝っていく

君は嘘をついたのか?

空の上の星屑の住人
溜息が君まで伝わるだろうか
騒がしく炎は燃えたぎっているよ
誕生日はもうすぐなのに
この週末は終わらない
止まったままの時計が
悲しみを刻んでいる

僕はあの日
こんな世界の中心に放り出されて
君は防波堤に打ち寄せた
波のひとしずくに過ぎない裏切りを
いくつも隠し持っていた

まどろむ月に照らされて
救いようのない朝を待つ

空の上の星屑の住人
溜息が君まで伝わるだろうか
騒がしく炎は燃えたぎっているよ
誕生日はもうすぐなのに
この週末は終わらない
止まったままの時計が
悲しみを刻んでいる

君は嘘をついたんだね
僕はあの日
こんな世界の中心に
放り出されてしまったんだから




  

2010年8月22日日曜日

重力

  

いつかの蒼い石垣を戻り
さらにその奥にある
宇宙の記憶

夜行性の虫達は
共鳴するように
やがて鳴き始めた
黒い空の白い星を見つめながら
空の果てにある答えの
重力に耐えきれないのだろう

今宵も愛は光っているんだ





  

2010年8月20日金曜日

有り触れた話

  

とある千もの話の中の
とある僕等は有り触れている

だから朝を信じた
だから光りを信じた

あれから
十代も終われど
まだ僕は青く苦い

とある千もの話の中の
とある僕等は有り触れている

だからまだ星を信じている
だからまだ夜を信じている
だからまだ僕は青く苦い

あれから
十代も終われど
まだ僕は青く苦い




  

2010年8月15日日曜日

無色

 

覚えた感情は
様々な色をしているが
いつかそれらは色を失い
空白へと還る

「涙」が「涙」でなくなる時
悲しみはどこへ向かうだろう

「心」が「心」でなくなる時
願うべき想いは消えていくだろうか

「生」のない「生」の中で
心や思考は色を失い
時の流れも
忘却に沈むのだろうか





 

2010年8月13日金曜日

虚ろげな空

  

上昇気流に舞い上がるシャボン玉が
ねじれた風の糾弾によって
割れてしまった一瞬の波紋は
軽い痺れの余韻を残した
この世の全ては
わずかな雲の切れ端に過ぎないという事を
エミルサラーの絵本が教えてくれる

しかし、何とも惨めである
相も変わらないんだ
生まれてきた事を憎んでいる
そんな、つまらない想いでしか
悲しみをぶつける場所が見当たらない
だが、それも
自慰行為のあとのように
過ぎ去ればまた、満ち足りない

虚ろげな空に培養された沢山の雲が
泡沫のように流れていくのを
僕は些細な情景にさえも媚びるように
侘びしく眺めている
何かを心に残してくれないものか、と

まるで平常心ではいられなかった
午後の事
嫌いな春風に当たりながら
空を見上げていたら
少し笑えてきたよ




  

2010年8月10日火曜日

2時44分

 

動くことをやめている
電池の切れた時計は
真夜中の2時44分のまま

地球は回っているが
時計は一瞬を刻み込んで
そのまま変わろうとしない

動くことをやめている
真夜中の2時44分で
止まっている

夜は生き続けているが
時計は動かない
大きな岩のように
微動だにしない

動くことをやめている
時は永遠にそこにある

小さな今を包むように
朝の訪れも、季節さえも
もう必要ないように

動くことをやめている
消えてしまうはずの2時44分は
そこにあり続けている




 

2010年8月9日月曜日

悲しい涙

  

悲しい夜を越えて
悲しい朝が来る
悲しい日々の中で
悲しい心は地を這いずり
悲しい明日は
悲しみの中で








僕は
今も泣いているんです





  

2010年8月5日木曜日

流れる空

  

空は透明に流れてゆく

勇み足で去るこの世界を
無視するかのように
笑いもせず、泣きもせず
透明に流れてゆく

僕は思い出を
そんな空に描いて
消えてゆくのを
じっと見つめていた




 

2010年8月4日水曜日

人間

  

他者と向き合う術を知らない

自分と向き合う術を知らない

自分の心に愛がないという事実は
あまりにも苦しい

この人生のすべてにおいて
世界は僕ひとりでした
この心は
誰の心も見ようとしなかった

水面の波紋のような
感情の揺らめきが
不愉快に頭を叩いてます

心は疲れ、ひざまづいた思いの中で
それでもなお
僕は人間で在りたいと願うのです




  

2010年8月3日火曜日

秋の日の天気

  

郷愁の湖にゆらめく
わずかな落ち葉の
乾いた葉脈を想う、ある秋の日

紅葉とは裏腹な世界の色を
見つめる雲の吐息が
国を伝いここまで来る
背骨の曲がった足跡は
それに消されては
雑草が生えていく
置いてけぼりにされた実感は
また一つの星を飲み込み
その病の重さを表している

すでにこの体を
地上に締め付ける鎖は
だいぶ緩くなっていることに
枕の上で跳ねる
恐怖と悔しさ

それでも
生まれ落ちたあの秋の日の天気が
思い出せず
まだ追いかけ続ける

それは
十八センチの物差しでは
計りきれはしない




  

2010年8月2日月曜日

真夜中にて

  

きっと僕は悲しんでいました

なんだか長い夜でした
風の過ぎ去った後の空は
おそらく澄んでいました

泣きました

多分これは、いつもと同じ夜でした
訪れる明日の色は何色なのか
漠然と考えていました
真夜中は静かでした

泣きました

きっと僕は悲しんでいました
コーヒーを飲みました
タバコを吸いました
音楽を聴きました

泣きました

ただ、泣きました




 

2010年8月1日日曜日

その

 

その領域は広がり
その痛みは動力を燃やし
その鍵は不明で
その虫は腹を回り
その煙は管を通り
その雫の波紋は歪み
その向こうは塀に閉ざされて
その声は言葉を越えて
その溝から溢れ出て
その尾は海を叩き
その核は殻を破り
その彼方に問い
その角膜は光りを反射し
その混濁の中で
その羽は墜ちていく