カランコロン
転がる空き缶が
コンクリートを叩く
知らない風が
何度目かの朝を追っている
誰の面影もない街を
カランコロンの音だけが
響いている
なぜか曇り空が不思議と悲しい
あの季節はまだ続いている
このままどこかへ
カランコロンと
落ちていくのか
知らない風の行方が知りたい
向こうの方で
花びらが舞っている
カランコロン
転がる空き缶が
コンクリートを叩く
ただ
カランコロン
カランコロン
カラン
コロン
この缶は誰が飲み干した?
迷彩のように
運命は紛れる
手の平で遊ばされるように
僕は踊る
時計が止まりだした時から
宇宙は動き出した
隙間だらけのパズルのように
世界は形を見せない
昨日見た夢が
壁の向こうを伝っていく
君は嘘をついたのか?
空の上の星屑の住人
溜息が君まで伝わるだろうか
騒がしく炎は燃えたぎっているよ
誕生日はもうすぐなのに
この週末は終わらない
止まったままの時計が
悲しみを刻んでいる
僕はあの日
こんな世界の中心に放り出されて
君は防波堤に打ち寄せた
波のひとしずくに過ぎない裏切りを
いくつも隠し持っていた
まどろむ月に照らされて
救いようのない朝を待つ
空の上の星屑の住人
溜息が君まで伝わるだろうか
騒がしく炎は燃えたぎっているよ
誕生日はもうすぐなのに
この週末は終わらない
止まったままの時計が
悲しみを刻んでいる
君は嘘をついたんだね
僕はあの日
こんな世界の中心に
放り出されてしまったんだから
いつかの蒼い石垣を戻り
さらにその奥にある
宇宙の記憶
夜行性の虫達は
共鳴するように
やがて鳴き始めた
黒い空の白い星を見つめながら
空の果てにある答えの
重力に耐えきれないのだろう
今宵も愛は光っているんだ
とある千もの話の中の
とある僕等は有り触れている
だから朝を信じた
だから光りを信じた
あれから
十代も終われど
まだ僕は青く苦い
とある千もの話の中の
とある僕等は有り触れている
だからまだ星を信じている
だからまだ夜を信じている
だからまだ僕は青く苦い
あれから
十代も終われど
まだ僕は青く苦い
覚えた感情は
様々な色をしているが
いつかそれらは色を失い
空白へと還る
「涙」が「涙」でなくなる時
悲しみはどこへ向かうだろう
「心」が「心」でなくなる時
願うべき想いは消えていくだろうか
「生」のない「生」の中で
心や思考は色を失い
時の流れも
忘却に沈むのだろうか
上昇気流に舞い上がるシャボン玉が
ねじれた風の糾弾によって
割れてしまった一瞬の波紋は
軽い痺れの余韻を残した
この世の全ては
わずかな雲の切れ端に過ぎないという事を
エミルサラーの絵本が教えてくれる
しかし、何とも惨めである
相も変わらないんだ
生まれてきた事を憎んでいる
そんな、つまらない想いでしか
悲しみをぶつける場所が見当たらない
だが、それも
自慰行為のあとのように
過ぎ去ればまた、満ち足りない
虚ろげな空に培養された沢山の雲が
泡沫のように流れていくのを
僕は些細な情景にさえも媚びるように
侘びしく眺めている
何かを心に残してくれないものか、と
まるで平常心ではいられなかった
午後の事
嫌いな春風に当たりながら
空を見上げていたら
少し笑えてきたよ
動くことをやめている
電池の切れた時計は
真夜中の2時44分のまま
地球は回っているが
時計は一瞬を刻み込んで
そのまま変わろうとしない
動くことをやめている
真夜中の2時44分で
止まっている
夜は生き続けているが
時計は動かない
大きな岩のように
微動だにしない
動くことをやめている
時は永遠にそこにある
小さな今を包むように
朝の訪れも、季節さえも
もう必要ないように
動くことをやめている
消えてしまうはずの2時44分は
そこにあり続けている
悲しい夜を越えて
悲しい朝が来る
悲しい日々の中で
悲しい心は地を這いずり
悲しい明日は
悲しみの中で
涙
涙
涙
涙
涙
涙
僕は
今も泣いているんです
空は透明に流れてゆく
勇み足で去るこの世界を
無視するかのように
笑いもせず、泣きもせず
透明に流れてゆく
僕は思い出を
そんな空に描いて
消えてゆくのを
じっと見つめていた
他者と向き合う術を知らない
自分と向き合う術を知らない
自分の心に愛がないという事実は
あまりにも苦しい
この人生のすべてにおいて
世界は僕ひとりでした
この心は
誰の心も見ようとしなかった
水面の波紋のような
感情の揺らめきが
不愉快に頭を叩いてます
心は疲れ、ひざまづいた思いの中で
それでもなお
僕は人間で在りたいと願うのです
郷愁の湖にゆらめく
わずかな落ち葉の
乾いた葉脈を想う、ある秋の日
紅葉とは裏腹な世界の色を
見つめる雲の吐息が
国を伝いここまで来る
背骨の曲がった足跡は
それに消されては
雑草が生えていく
置いてけぼりにされた実感は
また一つの星を飲み込み
その病の重さを表している
すでにこの体を
地上に締め付ける鎖は
だいぶ緩くなっていることに
枕の上で跳ねる
恐怖と悔しさ
それでも
生まれ落ちたあの秋の日の天気が
思い出せず
まだ追いかけ続ける
それは
十八センチの物差しでは
計りきれはしない
きっと僕は悲しんでいました
なんだか長い夜でした
風の過ぎ去った後の空は
おそらく澄んでいました
泣きました
多分これは、いつもと同じ夜でした
訪れる明日の色は何色なのか
漠然と考えていました
真夜中は静かでした
泣きました
きっと僕は悲しんでいました
コーヒーを飲みました
タバコを吸いました
音楽を聴きました
泣きました
ただ、泣きました
その領域は広がり
その痛みは動力を燃やし
その鍵は不明で
その虫は腹を回り
その煙は管を通り
その雫の波紋は歪み
その向こうは塀に閉ざされて
その声は言葉を越えて
その溝から溢れ出て
その尾は海を叩き
その核は殻を破り
その彼方に問い
その角膜は光りを反射し
その混濁の中で
その羽は墜ちていく